不傳庵 茶の湯日記
大所高所
遠州茶道宗家十三世家元 小堀 宗実
令和の御代となり、はや四ヶ月が過ぎようとしている。改元のためのたくさんの宮中行事や、関連のニュースが私達に毎日のように届くというのは、やはり今年という特別な年だからである。一連の報道を見ながら、一人の日本人として慶ばしい限りであるが、一方、陛下をはじめ、皇室の方々のご公務の多さにあらためて驚いた次第である。毎日まいにちが、ほとんど公務であり、各地への行幸など、プライベートのときはどのようかと少し気になるところでもある。
さてその一方で、日本の方向性に大いなる影響のあるべき国会は、いささか低レベルの内容である。いま、国際社会では、歴史上、人類が体験したことのない多くの問題をかかえている。一つひとつをあげることはできないが、それに対して的確、適切な対応をとるのが政治であるはずなのだが、日本では、足の引っぱり合いばかりである。大所高所〔たいしょこうしょ〕でものを考えるというのは、いささか訓練のいることでもある。選挙の勝敗や、票の数合わせばかり気にしている人達では、本当の意味での日本の舵取りはできない。日本の今一番の問題は少子化である。これは国の存亡にかかわることであり、三十年以上前からわかっていたことでもある。そしてこの大きなテーマに向かっていくことになれば、教育費無償化、保育制度、働く女性に対しての補償など、さまざまなことが考えられる。しかし現状では、個々のテーマのみが別々に考えられているので、結局整合性のない法令ができてしまう結果となる。これらに取り組むのは実は大変な勇気が必要である。それを行うのが政治家といわれる人であらねばならない。
さて、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックがあと一年に迫ってきた。国立競技場をはじめ、催しの行われる会場周辺の整備も急ピッチで、最終局面をむかえている。またチケットも販売され、当落の悲哀も早速ニュースで取り上げられたりもしている。それらの事は、なんとか開催当日には解決してゆくであろう。あと残されたものは何であろうか。それは、私達、受け入れる日本人の心である。これが一番大切である。そのためには、自分の立ち位置をしっかりすることである。茶道の稽古に、ひたむきに邁進することは、その大きな一助となると申し上げておきたい。この暑い夏、一服のお茶を心を込めて点てることに集中することが、自らの心を養い、人々の心を豊かにすることになるのである。