茶の湯日記1月

不傳庵 茶の湯日記 

華甲をふり返って

遠州茶道宗家十三世家元 小堀 宗実 

 早いもので、もう今年を振り返る時期となった。いまだ感動の残る九月の茶会ならびに祝賀会をはじめ、今年は私の華甲の祝賀の行事が相次いだ。まことにありがたきことで、本当に私は幸せ者である。9月17日の翌日には秋田に出張、それ以降も愛知、青森、福岡、福井東と各支部の記念行事と重ねて華甲のお祝いをいただいた。

 とくに10月の八勝館で行われた茶会では、濃茶席は、ご当地有数の数寄者による掛釜で遠州故縁の名物道具が取合わされた。詳細は略すが、床に遠州公が表装をした旨の手紙の添う牧谿筆布袋図が掛けられた。これにはやはり遠州と縁の深い石渓心月の賛があり、花入は尾州徳川家の飛青磁、点前座には、遠州高取の水指に、中興名物茶入・備前走井、遠州蔵帳の玉子手茶碗に遠州作茶杓「色替」といったお心入れであった。

 先月号にも記したが、いわゆる遠州道具は、その中の一点のもつすばらしさはもちろんのこと、床全体の品格や、調和といったものが、参会客にとっては本当に心地よいと思う。これが綺麗さびといわれる由縁であろう。

 10月22日から三日間福岡支部担当の全国大会も、それぞれの趣向をこらしたしつらえを楽しめた。濃茶は日本に禅と抹茶を招来された栄西禅師の聖福寺で、献茶式の後に行なわれた。薄茶は弘法大師の開かれた東長寺で、幼稚園から大学生までの子どもたちがすべてのお運びをするという、大会史上初の試みが行われ、多くの人々の心をなごませていた。立礼は、ホテルオークラの宴会場の天井を、天蓋を連想させる大きなワインレッドの幕で飾り、雰囲気のある席であった。毎年の行事ではあるが、各支部が自分たちの地域性や郷土色を取り入れながら工夫されたのは招かれる立場にはうれしいものである。来年は流祖遠州公の生誕地での、四支部合同担当ということになる。楽しみに期待したい。

 最後に、大会初日に東京国立博物館内にある応挙館において、海外企業CEO、ならびにジャーナリストを迎えての茶会を催した。これは文部科学省のスポーツ・文化・ワールドフォーラムのプログラムとして依頼されたものであった。当日は高円宮久子妃殿下を主賓に、宮田文化庁長官も参会された。講演、茶会の後の質問も、海外の方ならではのユニークなものが多く、当方も大いに勉強になった。

 さていよいよ歳末となり、来るべき新年の皆さまのご多幸をお祈りして筆をおくこととしたい。